神戸市東灘区のうおざき駅前心療クリニックです。GABAについての前回の調べでは入眠時間の短縮とnonREM睡眠時間の延長、が睡眠の質の向上の根拠のようでした。ただ、もうちょっとはっきりした効果についてかかれたものがないのか気になったので調べてみました。
睡眠に対するGABAの効果 ~ヒトに投与して調べました~
Yamatsu, Atsushi, et al. “Effect of oral γ-aminobutyric acid (GABA) administration on sleep and its absorption in humans.” Food science and biotechnology 25.2 (2016): 547-551.
上のタイトルはかなり意訳してしまっていますが、日本から出された報告で、前回調べた報告で引用されていたものです。GABAを経口投与して血中濃度を調べ、脳波検査を行ったところ、睡眠潜時を短縮し、nonREM睡眠時間を延ばしたとのことです(前回調べた内容と同じですね・・・)。ちなみにnonREM睡眠は深い眠りの相であるとされているので、これが増えると深く眠れている、と評価されることになります。さらに、アンケートも実施したとのことで、その詳細が気になるところです。ただ、被験者は10名とのことでかなり少なく、何かを述べる根拠として有用なのでしょうか。続きを説明する意義がかなりゆらいできましたが、乗りかかった船なので進めていきます。
どのように調べたのかについてですが、ここでは二つの検査をしています。まず一つ目、ベッドに入る30分前に100mgのGABAを摂取して、睡眠時の脳波を調べ、起床時に本人に対して、「眠りやすさ」と「目覚めたときの感覚」、「睡眠の満足度」についてVAS(各項目について視覚的に自分の感覚を数値化したもの)を測定しています。二つ目は、血中濃度です。200mgのGABAを摂取して、摂取10分前、摂取後30分、60分で血中濃度を調べたそうです。100mgのGABAではよい結果がでなかったのでしょうか。なぜ100mgで合わせなかったのかが気になるところです。
結果と考察はまとめられていました。強調されているのが目覚めたときの感覚で、GABAの摂取で改善しているとのことでした。ここまではいいのですが、それに伴う考察として、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は持ち越し効果で翌日の眠気が残るが、GABAではそこまで効果がなく起床時の感覚が良い、という論調です。いやちょっと待ってください。そもそもこの研究では健常者を被験者として使っていて、睡眠障害の人は除外されています。つまり睡眠薬を必要な人ではないということ。そりゃ、睡眠薬が不要な人に睡眠薬飲ませたら持ち越し効果もきついでしょうし、比較対象としてどうなのか。不眠症の人にGABA内服してもらって十分な睡眠が得られて起床時も爽快だったとかいう話であれば比較にもなるでしょうが、かなりこじ付けた比較と感じてしまいます。そもそも被験者10名の時点で結果がどんなものでもそのインパクトには疑問符がつきます。
血中濃度は投与後30分で最高に達したとの事です。60分後は30分後より下がったけど、投与前よりは高いままだったので、GABAが睡眠に有効だろうとの結論です。それ、100mgGABAの投与で言って欲しかったですね・・・。また、通常量のGABAの経口摂取では、GABAは血液脳関門を通過できないので、脳内には移行しないとのことです。消化器官の末梢神経に働くことで効果を発揮するのではないかと考えられているようです。
感想
前回の調べでは、GABAの商品はこういう結果に基づいているのかなるほど、と思いましたが、今回の調べでは、この結果に基づいて商品開発して大丈夫なのか心配になってしまいました。また、他の報告でも、GABAは睡眠効率やレム睡眠時間、中途覚醒の頻度など、睡眠にとって重要な指標については改善したと証明できなかったと指摘されています(Piril H. et al, 2020)。健常者の方が睡眠の質を良くしたいのであれば検討の余地がありますが、健常者ということは眠りに困っていないはずなので、どの層に響く商品なのでしょうか。さらに健康になりたい!!には訴求しそうな気はしますが、少なくとも不眠や睡眠障害で困っている方には効果がなさそうです。逆に機能性表示食品でよく眠れた、と自覚ができた場合は(少なくとも不眠については)病院を受診する必要がないといえるのかもしれません。というわけで、GABAは健康な人には効くけど、不眠症や睡眠障害で困っている方には(おそらく)効かない、というところが調べた感想になります。眠れない、夜中に何度も起きてしまう、などの睡眠障害でお困りであれば病院を受診する方が良さそうです。