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睡眠障害に対するお薬以外の治療法は?

神戸市東灘区のうおざき駅前心療クリニックです。睡眠障害といえば睡眠薬という印象が強いかもしれませんが、様々な心理療法があります。ただその有効性についてはまだはっきりした情報がありません。今回そのことについての報告があったので大変ざっくりとですがご紹介いたします。

成人の慢性不眠症に対する認知行動療法の種類と実施の仕方

Furukawa, Yuki, et al. “Components and delivery formats of cognitive behavioral therapy for chronic insomnia in adults: a systematic review and component network meta-analysis.” JAMA psychiatry (2024).

慢性不眠症に対する心理療法の効果について調べた論文です。
この論文においては睡眠衛生指導、認知再構成、建設的心配、マインドフルネス、アクセプタンス & コミットメント セラピー、睡眠制限、刺激制御、逆説的志向、リラクゼーションなどの様々な取り組みを心理療法と定義し、比較していました。といってもこれらがどんな療法なのかが文字だけではわかりにくいため、簡単に説明します。

睡眠衛生指導

睡眠に関する一般的な説明(例: 睡眠生物学、健康的な睡眠の特徴、加齢による睡眠パターンの変化)と、睡眠を改善するためのライフスタイル(例: 食事、運動、薬物使用)および環境要因(例: 光、騒音、温度)に関する一般的な推奨事項などの説明の事です。これには、刺激制御などの他の心理療法を含む場合がありますが、刺激療法などはあくまでオプションの部分だという事です。

認知再構成

睡眠を妨げるであろう信念をつきとめ、その信念を変えようとする事です。単に認知療法と呼ばれることもあります。

建設的心配

寝る前の心配事とその解決策を書き留めることで、ベッドでの心配事を克服しようとする事です。

アクセプタンス & コミットメント セラピー

ACTと略される療法で、人生でやってくる避けようのない苦しみを無理になくそうとせずに(acceptance)、人生を豊かにする行動を自己決定し行動していくこと(commitment)を目的とした心理療法です。

睡眠制限

その名の通りで、就寝時間を制限して睡眠の質を改善しようとすることです。まず、就寝時間を平均睡眠時間から30分遅らせます。そして睡眠効率に応じてさらに就寝時間を調整していきます。

刺激制御

朝起きる時間を固定し、昼寝を避け、眠くなるまでベッドに行かない、眠れないときはベッドから出て、寝室を睡眠のためだけに使うようにする取り組みの事です。

逆説的志向

眠らないようにする努力のことで、ベッドに入った後、眠らない事を目的としてあえて運動する事です。

リラクゼーション

には腹式呼吸や漸減的筋弛緩法なども含まれています。

結果

以上の中でどれが有益だったのかというと、認知再構成、マインドフルネス、アクセプタンス & コミットメント セラピー、睡眠制限、刺激制御だったということです。それに対し、睡眠衛生指導および睡眠日誌は効果がなく、リラクゼーションはベッド上で睡眠以外の時間を過ごす(リラクゼーションのための時間を過ごす)という点で刺激制御に反する行動となってしまうという点で有害なのではないだろうか、と説明されていました。

感想

これはあくまで慢性不眠症に対する治療であることに注意が必要です。突然眠れなくなったといった方については大抵において何かしらの原因がありますし、その原因はすぐには改善しない事が多いです。そのため、一時的には睡眠薬が必要になることが殆どです。それがなんらかの理由で長い間ずーっと眠れない、と感じている方に対しての治療としての心理療法についてはこの報告が参考になるかもしれません。臨床的な感想としては、確かに健康的な睡眠の特徴を説明したとて、不眠に悩む方の助けになるようには思いません。ただ、運動習慣が乏しい場合は運動を生活に取り入れることで睡眠の質は改善しそうなものです。また睡眠日誌については睡眠制限の際に必要な情報を得られる媒体ではあるため、それそのものの有効性がないだけであって、睡眠日誌をつけたうえで、就寝時間の調整をする(睡眠制限を行う)上では必要なのではないだろうかと考えられました。マインドフルネスについては色々な部分で有用な療法である印象があるため、積極的に取り入れていくと良さそうです。当院でも必要に応じてマインドフルネスの導入となるような取り組みをご紹介しています。また逆説的志向については突発的な入眠困難には有効かもしれない印象はありますが、慢性不眠症の方にとってはそもそも無理筋な治療法のように思われました。認知再構成が有効だということでしたが、睡眠障害の方に生活習慣や行動面の改善の余地があることをお伝えしてもなかなか聞き入れてもらえず「お薬が効かない。もっと眠りたい」に拘泥してしまい、その結果、眠れない自分はダメだ、気分が落ち込む、ずっと悲しい気持ちになる、といった抑うつ症状に陥ってしまう場合もあります。そのような方にこそ認知再構成が有用なのだろうとは感じるのですが、そのような方 “だからこそ” ご自身の考えが睡眠を妨げる信念になってしまっている事を理解してもらうのは大変むずかしいことです。なかなかそのような方に届く言葉を紡ぎだすことは難しく今後の診療の課題だなぁと感じます。

(どの論文でも書かれているとはいえ)結論にも書いてあるように、マインドフルネスやACTなど新しい治療法については過大評価されている可能性があるとのことで、今後の更なる研究結果が待たれます。

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