うれしい報告があります。
長らく診療していた患者さんからお手紙を頂きました。
以前勤めていた病院に入院となった際に私の患者さんとなり、数年間診療させていただいた方です。
なんとか退院できたのですが、だからといって症状が消失したわけではなく、その後も色々と困難を抱えておられました。
とはいえ、内服がそこまで症状の軽快につながっている印象が乏しく、
おくすりはなくしても大丈夫そうだったのですが、
本人の心配が強くなかなか完全に処方をなくすことはできていませんでした。
当院にも通院したいとおっしゃって頂きましたが、
どうしても超えられない障壁があり叶わなかった方です。
患者さんの同意を得て、個人情報を伏せて手紙を共有させていただきます。

この手紙から、私の関わりが親子関係の継続に役立っていたことを知り、驚きと安堵を感じました。
他の医師が関わっていたら、もっと良いカタチで娘さんとの関係性を構築できたかもしれませんし、
そればかりはなんとも言えません。
ですが、娘さんとの関係性を断ち切ってしまうような事にならなかったことに胸をなでおろしました。
おくすりに関してはこの患者さんには何度か「もう処方を中止してもいいのでは」と
提案していましたが、「いや、薬がなくなると不安です」との事で継続していました。
精神科診療では、このようなジレンマがよくあります、
①医師が「不要」と考える方ほど薬を求める
②医師が「必要」と考える方ほど薬を拒む
このジレンマへの対応は非常に難しく、患者さんの意向を無視すると診療関係が途切れてしまいます。
①の場合では「薬はもう処方しません」とつっぱねたところで、その方が別の医院にいって同じような処方を受けるだけでしょうし、処方量を増やしがちな先生のもとに行けば、もしかしたら状態が悪化するかもしれません。
②の場合でも「必要だから処方します」と無理やり処方しても、本人が内服しなければ効果は全く出ないですし、そもそも通院に来なくなるでしょうから、そこで終了です。
いずれにせよ難しい関係なので、いつもここには頭を悩ませます。が、結局たどり着くのが
- 薬を中止する際は、患者の不安に配慮しながら慎重に進める
- 薬が必要な場合も、患者の理解と協力を得ながら処方を行う
といったところになります。なかなかうまく行かないことの多い試みではありますが・・・。
とはいえ、むしろこのような悩みまで辿り着いておればその患者さんとの診療関係はある程度うまくいっていると考えられます。ここまでたどり着かない患者さんにもたくさん出会いました。予約時間の遵守にご協力いただけない方、待ち時間に憤慨して去ってしまった方、処方する薬剤が副作用ばかりで不審感をつのらせてしまう方や、処方うんぬんよりも、もっと前の段階として本人の悩みを詳しく聞いていくことが必要な場面で口を閉ざしてしまわれる方、など、そもそも診療関係が成り立ない方々です。トラウマ体験はできるだけ再外傷にならないように伺うのですが、その配慮がうまく噛み合わない場合があります。私なりの配慮がうまくいかない場合は、やはり別の先生を頼って頂く事が有効な手段だと思います。すべての方に気に入られる方はいませんし、すべての方に嫌われる方もいません。私の対応が完全でないことも分かってはいますが、私にできる範囲でしか患者さんの役には立てないと感じており、こういった経験から、医師、患者の相性というものは大きいという事を強く実感します。手紙をくださった患者さんとの相性は良かったんだと思います。このような出会いに恵まれたことに感謝です。お互いずっと元気で過ごせるよう、共に頑張りましょう。直接お礼も申し上げましたが、あらためて素敵なお手紙頂きありがとうございました。
心の悩みや不安を抱えている方、お気軽に心療内科・精神科のクリニックにご相談ください。一人で悩みを抱え込まずに、専門家に相談することで新たな道が開けることがあります。うおざき駅前心療クリニックは、皆様の心の健康と幸せな人生のために、ともに考える存在でありたいと考えています。神戸市東灘区から、魚崎、住吉、御影、青木などの阪神地域の皆様の心の健康と、より良い生活のために、誠心誠意サポートさせていただきます。