神戸市東灘区のうおざき駅前心療クリニックです。近年、オンラインでの心療内科診療が注目を集めています。当院でもWEBでの予約や問診に力を入れており、オンライン診療の可能性に大きな関心を寄せています。特に症状に苛まれるが故に外出に困難を感じる方や遠方の患者さんにとって、オンライン診療は非常に有益なサービスです。しかし、オンライン診療の導入にはクリニックにとって様々な課題があります。法律的な施設基準の問題、設備投資、そして医師の勤務体制の調整などです。勤務体制の問題から、オンライン診療を取り入れた対面診療が持続可能なのか?という点がどうしても自分の中でクリアにならずオンライン診療を諦めた経緯があります。そのため、オンライン診療の台頭には個人的に大変興味があり、調べてみました。
まずはWeMeetさんです。最近のオンライン診療はどれもここにチカラを入れているようなのですが、LINEで予約や診察が完結して、アプリを別でダウンロード不要というところが大変利便性も高く魅力的です。初診は5400円前後、再診で2900円前後と、若干費用負担は高くなっていますが、自宅で受診し、薬も届けてくれることを考えれば十分納得感のある費用ではないでしょうか。本院は神田にあるとのことで、関東の方であれば、対面診察も比較的容易です。実際の体験談を公開している方もいて参考になりました。この方の評価では、交通費なども含めて考えると納得の価格であるとおっしゃっておられます。この方の記事作成はちょうど一年前で、この頃はZOOMを使用する流れだったようですが、当記事作成時点(2024年12月)ではLINEアプリ内のビデオ通話で受診ができるようになっています。改善がどんどん進んでいるようで勢いのあるサービスですね。ただし、疾患が重篤化した時の対応には課題が残るような感想を抱かれていました。また、どんな医師が在籍しているのかも気になる点で、とにかく多くの医師が在籍しているものの、全然精神科の経験がない先生ばかりだと色々と問題がありそう・・・と思いましたが、ほとんどが精神科の経験のある先生ばかりです。また、夜間診療にも対応しておられて非常に魅力的なサービスだと感じました。相性があまり良くないかも・・・と思えば先生の交代をお願いできるのは、当院のような医師が一人のみの小さいクリニックでは不可能な大きなメリットでしょう。
次にエニキュアさんです。六本木と梅田に対面可能な医院を構えているサービスで、同様にLINEで予約が完結するようです。ただ、ZOOMでの診察のようなのでおそらくスマホだとアプリが必要なのではないでしょうか。ただ、ZOOMについてはLINEとまではいかないまでも、ある程度普及したサービスでもあり無駄なインストールが増えるストレスはそこまで強くなさそうです。ZOOM診察における顔出しはあくまで協力ください、の位置付けになっています。本人確認などの問題が心配ですが、その点はおそらくなんらかのシステムで対応しているのでしょうか。併せて在籍している医師は非常に多く、大変様々な経歴の先生がいらっしゃる印象でした。ある程度精神科の研修を積んだかどうかの基準となる精神保健指定医という資格があるのですが、それについてもお持ちでない先生が割と多い印象です。ただ、なんの資格がなくとも、しっかりとした精神科の診療をされる先生はいらっしゃいます。資格がないからといって受診しない理由にはならないとも思います。相性の問題も大きいので、指定医をお持ちで相性的に疑問な先生よりは、指定医がなくとも相性の良い先生にかかる方が良いかもしれません。
次にファストドクターメンタルクリニックさんです。小児の夜間訪問診療からの撤退では色々と揶揄された名前ですが、医療界に色々な変革をもたらしそうで、様々な取り組みを行っている企業なんだろうなという印象です。こちらのオンライン診療はどのようなサービスなのか。まず、入口からは先生の顔が見えません。誰が診察するのか、どのような先生なのかは分かりませんでした。予約に進むと「医療法人社団新拓会新宿ホームクリニック」という診療機関の診察予約を取る画面に移ります。インターネットでこの医院名を検索すると、名前の通り新宿にあるクリニックのようです。ただ、何が専門の医院なのかは分からず、今年の8月に診療科が変更になったとのお知らせが書かれています。「◯◯科になりました」との記載はなく、結局何の診療科目を掲げているのかははっきりしません。一般内科なんでしょうか。革新的な取り組みを進めておられる会社のようなのでおそらくしっかりした診療実績などを確認してこの医院との提携を結んだんだろうとは思うのですが、私からはどんな先生なのか、精神科の研鑽をどれくらい積まれているのかはWebからは読み取れませんでした。
他にもオンライン診療は様々なサービスが台頭しており、すべてを確認することはできませんでしたが、スマホアプリを新たに導入せねばならないか否か、などの違いがあるものの、いずれもオンラインで予約、診療まで完結し、薬の受け取りまで配送で受け取れるというのは画期的なサービスです。しかし、採血検査の実施という点では、依然として課題が残ります。精神的な問題の中には、稀に身体疾患が原因となるケースがあります。また、長期間薬を服用している患者さんの場合、副作用の早期発見のために定期的な血液検査が必要です。この採血検査は、現状ではオンライン診療では対応することができません。一方で、この「制限」が逆にメリットとなる場合もあります。例えば、薬は必要だけれども採血には抵抗がある患者さんにとっては、オンライン診療の方が好ましい選択肢となるかもしれません。いずれにせよ一年に一度は対面診察を行う必要があるはずなので、本院は少なくともご自宅の近くにある医院で受診する方がいいのだろうなとは思います。
精神科・心療内科の診察は、歯科のような直接的な処置や、内科のような聴診器を使用した診察が比較的少ないという特徴があり、オンライン診療との親和性は高いと言えるでしょう。また、対面心療とオンライン診療による精神科外来治療の結果に有意差がないとする報告もあり、精神療法を行う上での障壁は少ないとも考えられます。その一方で、Web上でのコミュニケーションには独特の課題があります。コロナ禍以降のZoom利用経験からは、以下のような問題を感じました。
オンライン診療のコミュニケーション課題
- 非言語コミュニケーションの読み取り
- 微妙な表情の変化
- 細かな反応の観察
- 会話の流れの解釈
- 患者の反応の適切な把握
- 話すそぶりや間の意味理解
- 回線品質による要因との区別
- 通信遅延と実際の逡巡の区別
- 画質や音質による情報の欠落
- 複数人対応時の難しさ
- 個々の反応の把握
- 全体の雰囲気の読み取り
これらの課題を考慮すると、オンライン診療は単にWebシステムを構築すれば対面診察に置き換わるものではないと考えられます。症状が悪化した際に対面診療の必要性が生じるのもこういった要因によるものでしょう。軽症の方ほどオンライン診療に適していると言えますが、外出に困難の生じるような重症の方が逆に不適になってしまうという状況はジレンマであるとも言えます。医師には対面診療とは異なるコミュニケーションスキルが求められますし、技術的制約を踏まえた上で患者さんの状態を適切に評価する能力が必要となります。オンライン診療は近年始まったばかりであり、今後どのような発展を遂げるかについては上記の課題をいかに解決し、最適化していくかにかかっていると考えます。以上、神戸市東灘区のうおざき駅前心療クリニックによるオンライン診察についての調査結果でした。