神戸市東灘区のうおざき駅前心療クリニックです。
様々な精神疾患はオーバーラップすることが多く、例えば強迫症の方は不安症(パニック、社交不安症、全般不安症、限局性恐怖症など)やうつ病にかかりやすい事が知られています。
また、ADHD特性をもつ女性はADHD特性を持つ男性に比べてうつ症状や不安症状に悩みやすいことが知られています。同じ疾患でも性別によってなぜ併存する疾患が違ってくるのか、その疑問に一石を投じる報告が2021年にオランダでなされました。
ADHD特性をもつ被験女性のうち、45.5%がPMDDの症状を示していた。これは一般人口におけるPMDDの有病率28.7%と比較すると高いようだ。
残念ながらADHD特性をもつ男性と女性を比較した情報ではありません。しかしADHD特性をもつ女性は月経前不快気分障害(PMDD)や,初産後に産後抑うつ(PPD)を経験しやすく、また更年期障害もより重度になりやすいというのです。ADHD女性のPMDD率は45.5%であり、それに対して一般人口のPMDD率は28.7%だとか。ADHDの特性の過集中がうまくはたらけば仕事や勉強で成果を上げたりすることも可能ですが、周囲と軋轢をうむような症状をうまく回避できないと色々な困難に直面するため、その結果他の精神疾患にもかかりやすのだろうと考えられます。

生理のときにとても不安定になります・・・。
PMDDに対応するには経口避妊薬(ピル・OC)の使用が有効です。ひどい月経痛(生理痛)も改善する効果もありますし、将来の卵巣がん、子宮体がんのリスクも減らす効果もあり、月経で苦しむ女性にはとても頼りになる薬剤です。海外に比べて日本では普及が進んでいないので、もっと気軽に処方を受ける環境になればより女性が生きやすくなるのだろうなと思います。低用量ピルが使えない、もしくは改善に乏しかった、といった場合は黄体期に抗うつ薬を内服することでPMDDの諸症状を緩和する方法もあります。ただ、この報告ではADHD特性をもつPMDDの方に抗うつ薬を使用するとかえって症状を増悪させる可能性も示唆されているので、使用には注意が必要です。
また注意点としては、この報告は患者さんに以前のことを思い出してもらって情報を収集しているものであるため、産後抑うつとしながらももしかしたら出産・妊娠前からうつ症状を持っていたかもしれないことや、ADHD特性をもつ女性の特徴ではなく精神疾患をもつ女性の特徴を報告しているのかもしれない、ということがあります。どんな情報についても言えることですが、参考にはしつつも鵜呑みにしないことも必要です。
いずれにせよ月経による症状は不快でつらいものです。かかりつけの医院でお薬の相談をするだけでなく、十分な睡眠をとる、ストレスを減らすためのご自身なりのリラックス方法で発散させるなども対策も必要かもしれません。ご自身にあった適切な対応で、充実した毎日が過ごせますように。
あとがき

