神戸市東灘区の心療内科、うおざき駅前心療クリニックです。
最近、睡眠薬「ゾルピデム(マイスリー)」が認知症を引き起こす?とする記事が話題になっています。
この記事では、ゾルピデムが「脳のゴミ排出システム(グリンバティックシステム)」を妨げる可能性があると述べていますが、当院ではこの情報を慎重に受け止めています。
この研究自体は非常に意義がありますが、現時点では動物実験に基づくものです。
動物実験で問題が見つかったからといって、人間でも必ずしも同じ結果が生じるとは限りません。
新薬の開発ではよくあることなのですが、
製薬会社各社が血眼になって研究した薬品で、
動物による研究も含めて安全性や有効性を追求した薬品でも
いざヒトに投与するといろいろな副作用や問題が生じて結局販売には至らないことが数多くあります。
実際、動物実験の結果が人間に応用された治療法は非常に少なく、わずか5%程度とされています。
また、この記事ではアミロイドβの蓄積がアルツハイマー型認知症を引き起こすとされていますが、アミロイドβによる老人斑は生理的な加齢性変化でも生じる可能性があり、必ずしも有害とは限りません。
以上のことから、ゾルピデムを服用することで必ずしもアルツハイマー病になるという結論には至りません。
もちろんベンゾジアゼピン系の睡眠薬のように、認知症を引き起こすのではないか、という疑惑は
以前から根強く心配されている事ではあり、
むやみやたらにベンゾジアゼピン系の睡眠薬やゾルピデムのような睡眠薬を野放図に推奨することはありませんが、
その反対に、過剰に心配して絶対にゾルピデムは処方しない! などと身構える必要もないと考えております。
しかし、この記事を知ったことで不安を感じてしまい、内服する度に「脳にゴミが溜まるのではないか」と強い不安を感じることは治療上有益とは思えませんので、もし不安を感じている方がいらっしゃいましたら、他の治療法についてご相談いただけますので、遠慮なくお問い合わせください。