神戸市東灘区のメンタルクリニック

Web予約
友達追加
疾患一覧
マップ・診療時間
よくある質問

認知症

認知症の治療や予防
物忘れの種類
・アルツハイマー型認知症
・血管性認知症
・レビー小体型認知症
・前頭側頭葉変性症
目次

超高齢社会の日本において、認知症は社会的にも重要な疾患です。
2013年に発表されたGlobal Dementia2013-2050によると世界の認知症患者は2050年には1億3500万人になり、
日本でも厚生労働省の発表では2050年には認知症患者が1016万人(27.0%)に至るそうです。

認知症の治療や予防

現時点では認知症の根本的な治療法はありません。期待された認知症の新しい治療薬がここ数ヶ月で販売開始となっていますが、ヨーロッパでは認可がおりないなど、先行き不安な状態ではあります。治療ができないのであれば、予防を・・・と考えたくなるのですが、2010年にアメリカで発表された予防因子でおすすめできるものは、運動のみです。認知トレーニングは良さそうだけど、はっきりしない、といったレベルのようです。

参考までに認知症の危険因子と防御因子を記載します。

防御因子・高い教育歴
・刺激的な仕事
・精神機能を活性化させる趣味
・脳トレーニング
・社会的交流
・有酸素運動
・散歩
・指先の運動
など

リスク因子・糖尿病
・高血圧症
・高脂血症
・肥満
うつ病
・不活発
・喫煙
など

※認知症診療医テキストより抜粋

防御因子を増やして、リスク因子を減らせば認知症の予防につながりそうです。おおざっぱに言ってしまえば、社会と断絶せず、規則正しい生活をして運動も取り入れ、病気になりにくい生活を送ることが良さそうです。認知症に限らずあらゆる病気の予防に良さそうな生活、健康ではつらつとした生活を目指そう、というところでしょうか。

脳トレーニング

認知症の兆候が出てきてから慌てて家族が本人に色々とやってもらおうとするケースを散見します。これはもちろん家族としては本人のためを思っての行動なのですが、脳トレーニングが有効なのはあくまで予防です。ある程度認知機能の低下が進んでしまった方に、無理に脳トレをやらせようとすると、失敗体験が重なってしまうため、むしろ本人にとっては苦痛になってしまう場合もあります。ストレスを加えて更に自己効力感が低下して焦燥感が募り、その結果BPSD(認知症の周辺症状)が悪化する・・・こうなるとなんのための脳トレが分かりません。もちろん本人が楽しく取り組んでおられるのであれば是非続けるべきだと思いますが、嫌がる本人に対して「認知機能が悪くならないために」と強制してしまうと逆効果になる可能性があります。

肥満

リスク因子にあげられていますが、これについて細かく述べると年齢によって異なるようです。肥満にサルコペニアが合併したサルコペニア肥満は単なる肥満と比べて、よりADL低下、転倒、骨折、死亡をきたしやすく注意が必要です。肥満のみであれば、糖尿病のリスクになりますが、死亡リスクは下がります。認知症のリスクについては、中年期の肥満はリスクとなりますが、高齢者ではリスクを下げるそうです。反対に高齢者で低体重や体重減少がリスクとなり、やみくもに痩せることは(認知症にとっては)推奨されません。

性ホルモン

これは上記のリストにはありませんが、基本的に男女ともに性ホルモンが低下すると認知症のリスクになります。男性ではAGAの治療としてジヒドロテストステロンへの変換酵素阻害薬が使われており、悪玉テストステロンと言われることもあるジヒドロテストステロンですが、記憶や認知機能に関連すると考えられています。また、女性では骨粗鬆症の治療薬として選択的エストロゲン受容体調整薬などが使われるといったように、エストロゲンは海馬に対する作用や抗酸化作用があるなど、女性にとって重要なホルモンですが、認知機能にとっても重要であると考えられています。ただしこれらに関しては未だ認知機能や精神科的な治療には取り入れられておりません。今後の治療作用部位としては有力なようにも思えますが、どうなのでしょうか。

物忘れの種類

認知症の型によっては物忘れが目立つのではなく、やる気が出ず、うつ病のような症状が出たり(レビー小体型認知症)、人が変わったかのように非道徳的な行為(万引きや他者への危害行為)に及んでしまう場合(前頭側頭型認知症)もあります。また、最も多い物忘れの型の認知症(アルツハイマー病型認知症)でも、進行していくと被害妄想がひどくなったり、些細なことでも怒りやすくなったり、ふらっとでかけて帰ってこれなくなる場合もあります。以上のように、認知症だったとしても様々な症状が出る場合がありますし、反対に認知症のような症状に見えていても、実際はうつ病だった、などということもあります。診察で予想できる場合もありますが、継続的に診察を受けて頂き、薬剤への反応によって病気の種類がはっきりすることもあります。まずは継続的な受診をお勧めします。

認知症の原因として最も多い型で、認知症の3人に2人はアルツハイマー型認知症と言われています。1906年にAlois Alzheimerが報告したためこのような名前がついています。

症状の典型例

少しずつ物覚えが悪くなっていきます。初期にはエピソード記憶障害、つまり物をおいた場所を忘れる「置き忘れ」が特徴的です。他にも色々な機能が低下するため、時間間隔が乏しくなる時間的失見当識や、日時用生活における段取りや要領が悪くなり作業効率が悪くなるといったところから始まる遂行機能障害や、特定の名称が思い出せなくて「あれ」「これ」が増えるなど様々な困り事が徐々に増えていきます。そのため、質問に答えられないことが増えますが、無意識にごまかすように返答することが増えていきます。幻覚や幻視は初期には少ないので、レビー小体型認知症との違いとしてよく取り上げられますが、進行例ではしばしば認めます。

血管性認知症

脳血管障害が原因で発症する認知症で、症状は脳血管障害が脳の中のどの部位でおこったかによって様々ですし、部位がはっきりしていれば、できることとできないことの差が激しい場合があります。アルツハイマー型認知症は徐々に悪化することがほとんどでずか、この型の場合は脳血管障害が起こるたびに機能が障害されるため、そのたびに機能が段階的に低下していきがちです。段階的に機能が低下するため、患者さんご自身でも変化に気づきやすいという特徴もあります。

レビー小体型認知症(DLB)

アルツハイマー型認知症に比べてパーキンソニズムや独特の精神症状を呈しやすいです。発症初期から鮮明で具体的な幻視を見るとされていますが、初期には物覚えはそこまで損なわない場合もあります。レビー小体自体はユダヤ系ドイツ人のフレデリック・レビーによって発見されたものですが、この認知症の型の疾患概念を最初に報告したのは日本の小阪憲司先生とのことです。kosaka diseaseとかにすれば名前が残ったのでしょうが、レビー小体病というくくりで論じると、症状の出方によってパーキンソン病だったりレビー小体型認知症と区別されるという違いだけになるため、その点を重視した名前なのかもしれません。

症状の典型例

認知機能が1日のうちに変動することや、繰り返し出現する具体的な幻視や、パーキンソニズム、レム睡眠行動異常症があります。また、比較的早期から見られるのが慢性習慣性便秘でパーキンソン病では運動の症状が出る10-20年前から出現すると言われています。また、過活動膀胱が生じやすく蓄尿障害をきたし夜間の中途覚醒の原因となったり、レム睡眠行動異常症やうつ症状を認めます。

前頭側頭葉変性症

欧米では10%を超える報告があったり、家族性が30-60%などと高いのですが、本邦では家族歴のある本症はまれです。65歳未満の認知症の14.7%、65歳以上の1.6%、全体の認知症の2.6%が前頭側頭葉変性症との報告もあり、壮年期に多い型です。

特徴

物忘れでは説明できない状況判断ミスが多発するものの本人には問題意識に乏しく、周囲が戸惑うケースがあったり、怠惰でものぐさ、不活性となり病前にあった趣味への興味がうすれたり、場にそぐわない幼稚あるいは攻撃的な言動を取るようになり、衝動的で無分別かつ不注意となり、社会的に不適切な行為をとるようになったり、強迫的な行動に没頭したり、人間的な温かさが失われたり、食行動に異常を生じたり、見たものをそのまま声に出してしまったりと、社会的に問題のある行動に至ることが多いです。治療方法に乏しく、環境調整や介護によるQOLの向上などの対称的な治療しかないのが現状です。ただし、これらの行動上の問題は他の精神疾患や神経疾患でも出現します。前頭側頭葉変性症と診断されていても、年齢を重ねて機能が落ちることで、なんとか社会適応していたASDや精神疾患の方の問題行動が表面化しただけ、というケースも一定数含まれているのではないか、とも推測もされています。

※引用: 認知症ハンドブック

PAGE TOP