自閉スペクトラム症、注意欠陥多動症(ADHD)、学習症などがあります。
現れ方は様々で、幼少期に明らかに勉強や友人関係で困る場合もあれば、軽度の方は大人になって仕事をするなど、よりストレスが高くなった時に困り度が強くなって気づかれる場合もあります。ただ、これらの疾患は育て方によって発症するわけではありません。
自閉スペクトラム症
注意欠陥多動症
限局性学習症
検査について目次
自閉スペクトラム症
自閉症だとは安易に言われがち、「かわりものだ」「対人関係が苦手」などの特徴のみではこの疾患にはあてはまりません。周囲との関係を作ることに難しさを抱えているが、それは恥ずかしがってのことではなく、人に無関心な場合もあったり、例え話や冗談などが理解できず言葉通りに解釈する傾向があったり、幼少期の頃にごっこ遊びができなかったりする場合で、その後の友人関係や社会生活(学校生活や仕事上でのことがらなど)に支障をきたす場合に疑います。有病率は1~2%で、男女比は2~4:1で男性に多いと言われています。晩婚化により父親の年齢が高くなることにより有病率が高くなっている可能性が考えられています。
この名称のうち「スペクトラム」という部分が重要です。
スペクトラムspectrum: スペクトル、(目の)残像、連続体、範囲
スペクトラムには連続体という意味があります。つまり、ほとんどの人は自閉症的な要素を持っている、という意味を持つ疾患名です。各個人によって、その度合が強いか、弱いか、の違いがあるという事になります。特にトップレベルの大学にはこの要素を強く持つ人が多いと言われており、この傾向を持つからと言って必ずしも問題がある、治すべきだ、という訳ではないことは知っておく必要があると思います。
症状
社会的コミュニケーションの障害
難しい表現ですが、具体的には、視線が合わない、人見知りがなかったり逆に激しかったりする、他者の表情が理解できないし、推測もしない、そのため他者の気持ちが理解できず推測もしない、など他人への興味が弱いことがあげられます。そのため、暗黙のルールが理解できなかったり、集団行動が苦手、言葉を字義どおりに受け止めてしまい文脈が理解できない、他人にお構いなくマイペース、表情変化に乏しい、会話が続かない、ボディランゲージが乏しいなどがあげられます。
行動、興味、活動の限局した常同的で反復的な様式
これも難しい表現ですが、興味の範囲が狭かったり、興味のあることだと細かい知識まで覚える、意味のない習慣に執着する、自分なりの手順を守ろうとする、予想通りにならないと混乱する、環境変化に順応できない、応用力がない、融通が効かない、一番にこだわる、ごっこ遊びや想像力を必要とする遊びをしない、物語より図鑑やカタログを見るほうが好き、感覚の過敏や特定の感覚への執着、などがあげられます。
ひょっとして自分も?
症状については羅列していくとキリがありません。これらを読んでいるとご自身も当てはまるものがいくつかはあるのではないでしょうか。特にコミュニケーションに関する症状のどれ一つも当てはまらないという方がいたとしたら、それはもはやコミュ力お化けとか表現されるような方で、素晴らしい能力を持ってはいるものの一般的な能力とも言えないかもしれません。それがスペクトラム、といわれる所以でもあります。また、勉強に関しても、特殊な才能(見たものを画像のように覚える)があったり、細かい知識まで覚えられたり、一番にこだわると有利だったりするので、自閉症スペクトラムの特徴が勉強に専念するうえでは有利に働く部分もあるかもしれません。どの疾患もそうなのですが、自閉スペクトラム障害ではなく、自閉スペクトラム症に名称が変わったことも納得しやすいかもしれません。
注意欠陥多動症(ADHD)
ADHDは注意欠陥・多動症(注意欠如多動症)といわれ、注意をし続けることが困難(興味があることには没頭できる)で、衝動的な行動に出てしまったり、じっと静かにすべき状況でも動き回ったりしてしまう病気です。じっとしていられない、といった多動と称される特徴は成長に従い目立たなくなることがありますが、不注意の方はおとなになっても残ってしまうことが多いと言われています。男女比は2:1程度で男性に多いとされています。ASDと同様にだれしもこの傾向はもっているといわれています。
ADHDに関しては治療薬の選択肢が複数ありますが、当院では
コンサータやビバンセは処方できません。コンサータやビバンセ以外の薬物療法が受け入れられる方のみご相談ください。
また、治療に関してはADHDの症状を完全になくすことが目標なのではなく、症状を持っていても社会的な困難を感じにくく、また自分らしさとして折り合えるようになることです。要するにADHDらしい症状のある自分を受け容れ、その上でどのように対処して過ごしていくかということを前向きに考えていける、というところがゴールです。そのゴールが達成されるのであれば、薬物は必ずしも必要ではないかもしれません。
限局性学習症
学習症は知的な部分や発達には問題がないのに、読み・書き・計算のどれかが困難となる疾患です。読字障害(ディスレクシア)、書字表出障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア))などに細分化されます。
読字障害
言語によって出現率が異なります。流暢かつ正確に読むことが難しく、逐次読みや語の途中で区切ったりや黙読が苦手だったり、文字の違いが分からなかったり文字や単語の理解に時間がかかったり、文字の並びが歪んで見えたり文字自体が二重に見えるなど、様々な状態があります。
書字表出障害
流暢かつ正確に書くのが難しい状態です。多くの方は読字障害ももっています。「わ」と「は」など同じ読み方になりうる文字の間違いや、「め」と「ぬ」など似ている形の文字の間違い、画数の多い漢字での一部を間違うのが代表的な症状です。
算数障害
計算や文章題がとても苦手です。2+5程度の簡単な計算の答えを覚えるのが苦手なので九九も苦手で、時計の長針と短針を混同してしまうので時間間隔が乏しかったりします。
発達障害の検査
成人の方: 自費診療にはなりますが、ASD,ADHDの傾向をつかむ検査を行うことができます。
未成年の方: いずれの疾患も当院では正確な診断は困難です。地域の療育センターを受診して頂く必要があります。
軽症であれば成長に伴い本人なりの対処行動を身に着けていくことで、社会的に問題なく過ごせる場合もありますし、反対に叱責を受ける機会が多い場合には「がんばってもできない」「どうせ自分なんて」などといった心理的な傷つきから二次障害と言われる不適応行動に至ってしまう場合もあります。そういったことから対人恐怖、抑うつ症状、強迫性障害、依存症が併発しやすいとも言われています。できないことを必ずしもできるようにする、ではなく、できないけれどもそれ以外のできることで社会に適応していく、といった考え方が必要になる場合もあります。