昔は精神分裂病と言われていました。もっと前は早発痴呆とも。
誰かに見られている気がする、視線を感じる、自分だけに聞こえる声がする。
その声は自分のことを説明したり、罵倒してきたり、いいことを言ってきたり、
人によって、また状態によって様々に変化することもあります。
自分の考えが声になって聞こえる、
自分の考えが抜き取られる、と感じる方もいます。
自分にしか聞こえない声に返事をすれば、それは他者からみると独り言を言っているように見えます。
奇妙な感じがする、なにかしら世界が変わってしまったような妙な感じがある、
全然関係のない変化を自分に対する具体的なメッセージだ、などと感じる、
例えば「近所の犬が吠えているのは、自分の内臓が悪くなることを知らせている」などと確信したりする方もいます。
症状が顕著に表れると、健常な方は何も感じないのに、奇妙な感覚が生じてきて、現実と想像が混ざってしまい、「宇宙人が攻めてくる、恐ろしい」などと大変怯えてしまい
他の人と話すのが怖くなってしまい、閉じこもったり、過剰に心配して部屋の中にバリケードを作る、、、といった方もいらっしゃいます。
これらの症状に対して「何かおかしい、お医者さんにいかなくては」
と思えていれば良いのですが、
多くの方はこの症状の事を「症状」と認識できず、
この奇妙な体験を事実だと感じてしまいます。
そうなると周囲の人が「精神科にかかったほうが・・・・」と助言をしても
応じることができません。
いずれにせよそのような症状は大変不快でつらいものです。
これらの症状の多くはおくすりで改善することができます。
このお薬は1950年に開発されました。
まだ、70年の歴史しかありません。
とはいえペニシリンも1940年前後から使用されているので
それほど大きな差はないとも言えます。
様々な種類のお薬が開発されており、
現在ではいろんな選択肢があることは患者さんにとっても喜ばしいことです。
薬を飲むことなく、病的な体験に苛まれ続けると、
正常だった思考まで損なわれてしまい、
最終的には会話内容が乏しくなったり、
感情が出にくくなったり、
自発的に動きにくくなったり、と全体的な活動が乏しくなってしまいます。
冒頭の「早発痴呆」とはこのような状態を端的に表現したものです。
若くして認知症のようになってしまったと表されています。
そのような悪化を防ぎ、精神的な機能を保ち続けるために
薬を飲み続け、できるだけ再発を減らし、症状を抑えることが重要と言われています。
ですが、この薬を忘れずに飲み続ける、ということ自体が大変難しく、
更にはこの病気の方はどうしても被害的な妄想に支配されることが多く、
薬を飲み忘れると症状が悪化して
「この薬は実はあまり効いていないのではないか?」
「むしろ薬を飲む方が体に悪いんじゃないか?」
という妄想に支配されてしまい、結果、薬を飲まずに更に妄想が悪化してしまいます。
当院では行っておりませんが、
当事者研究という手法で、統合失調症の症状に対応する良い方法を考えて立ち向かうという方法もあります。